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2025.7.18
コラム

買付証明書・売渡承諾書の「効力」と注意点

こんにちは、株式会社ビーメインの木戸翔太です。

今回は、不動産取引における「契約直前のキャンセル」について、実際の取引現場で起こった事例をもとに、仲介会社としてどうあるべきかを整理したいと思います。


【書面の重みと、その扱い方】

不動産売買において、契約の前段階で「買付証明書」や「売渡承諾書」が交わされることがあります。 これらはまだ契約そのものではなく、法的な拘束力は限定的なものですが、相手への意思表示としての意味は重く、安易に出したり引っ込めたりすべきものではありません。

書面を交わす時点では、買主・売主それぞれに「ある程度の覚悟」があるとみなされます。その書面が軽く扱われてしまうと、取引全体の信頼にも影響を及ぼします。


【実際に起こったキャンセル事例】

弊社が売主様からお預かりしていた物件に対し、法人の買主から買付証明書が入り、金額交渉も終えて売渡承諾書を発行。その後、契約書の作成や契約日の調整を進めていた段階で、買主側からキャンセルの申し出がありました。

理由は「家族の反対があったため」というものでした。

こうした理由は、売主様にとって到底納得できるものではありません。家族の意向や社内調整といった事項は、買付を出す前に当然に整理しておくべき内容だからです。

ただ、今回のケースでは、買主側の仲介会社が「自社の確認不足でした」と非を認め、誠意を持って対応してくれました。不測の事態に対して、仲介会社がどう対応するかによって、その後の信頼感は大きく変わります。


【売主側の事情によるキャンセルもある】

実務では、契約前に売主側の意向が変わることもあります。 たとえば、「他でより高く買いたい方が現れた」といった理由で、売渡承諾後に売却方針を見直されるケースもあります。

つまり、買主・売主のどちら側にも、契約直前に取引方針が変わることは起こりうるのです。

だからこそ、仲介会社に求められるのは、表面的な交渉だけでなく、相手の状況や背景をくみ取り、契約に向けて不安要素を一つひとつ潰していく“予測力と調整力”だと思います。


【買付証明書・売渡承諾書に法的拘束力はあるのか?】

「買付証明書」や「売渡承諾書」は、実務上よく使われる書類ですが、法律上の契約成立とは異なるフェーズのものです。

重要なのは、以下の2点が揃って初めて「契約が成立する」とされることです。

・価格、物件、引渡し条件などの重要事項について明確に合意があること
・双方が、契約書に署名・押印を済ませていること(終局的な意思の合致)

このため、買付や承諾書の段階では「まだ契約前」という位置づけです。
買主が一方的に撤回しても、法的には損害賠償や違約金を請求できないのが基本です。

もっとも、交渉経緯や文面の書き方によっては、一定の信義則上の責任が問われる可能性がゼロではありません。
とはいえ、現実的には「拘束力を前提に動くこと自体がリスク」と言えます。


【買付・売渡承諾は“信頼”の証でもある】

買付証明書や売渡承諾書は、形式的な書面ではなく、「取引の意思を持っている」という信頼の証です。

あらかじめ不確定な要素がある場合は、内容を盛り込んだうえで関係者の承諾を得る必要があります。書面は覚悟と自分の信頼をもって提出していると考えるべきで、簡単に出したり引っ込めたりするものではありません。

仲介会社は、その点をきちんと見極め、状況をコントロールしながら案件を進めることが求められます。


【契約しても安心はできない】

契約書に署名捺印したあとでも、実際に決済が完了するまでは何が起こるかわからないというのが現場の実感です。

過去には、契約締結後に売主様の意向が変わり、手付解除によって契約が白紙になったこともありました。こういったケースは頻繁に起きるわけではないですが、現実に存在します。

また、金融機関の方針変更などにより、買主側が融資を受けられず、契約はあるが決済できないという状況も実際にありました。

不動産取引は、最後の最後まで油断できません。


【最後に】

不動産の売買は、単なる書類のやりとりではなく、信頼関係と細やかな調整の積み重ねによって成り立つものです。

書面の意味や背景をしっかり理解し、関係者が納得できる形で着地を目指す。

それを調整するのが、仲介のプロとしての責務だと思っています。

株式会社ビーメイン 木戸翔太

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