SNSでの不動産情報発信について考える

こんにちは。株式会社ビーメインの木戸翔太です。
今回は、SNSを使った不動産情報の発信について、実際に私が感じていることや、調査を通して見えてきた現状についてまとめてみたいと思います。
SNSでの情報発信が不動産業界にも広がる時代に
Instagram、Threads、X(旧Twitter)、Facebookなど、今では多くの業種でSNSを活用した情報発信や集客が当たり前になってきました。
不動産業界でも、そういった流れは確実に進んでいます。
最近よく目にするのが、収益不動産・事業用不動産の売買情報を、特定されない程度に匿名で発信しているアカウント。
物件の詳細な所在地や価格までは明かさず、それでも何らかの形で「買い手」や「関係者」にアプローチしようという投稿が日々流れてきます。
しかし、それを発信しているのが一体「誰なのか」が分からない。
宅建業者なのか、はたまた不動産業と関係のない個人やブローカーなのか。
その境界が、いま極めて曖昧になっているのが実情です。
宅建業者には、広告のルールがある
ご存じのとおり、宅建業者が広告を出す際には、
宅建業法や景表法、さらには業界団体による広告規約など、非常に細かいルールがあります。
たとえば、
- 必須記載事項の明記
- 文字の大きさの基準
- 誤解を招く表示の禁止
など、違反すれば指導や処分の対象になります。
こうしたルールの中で、日々注意を払いながら物件の広告を行っています。
それに対して、SNSで不動産情報を投稿している多くのアカウントは、
「どこの誰かも分からないまま」「ルールも不明確なまま」情報発信を行っているのが現状です。
実際に協議会や行政に問い合わせてみた
この現状に疑問を感じた私は、
・公益社団法人 近畿地区不動産公正取引協議会(近畿公取協)
・大阪府宅建指導課
に直接電話で問い合わせてみました。
近畿公取協の回答:
- あくまで自主規制団体であり、法的解釈までは回答できない
- 現時点ではSNS上での不動産情報発信について、明確なルールは策定されていない
大阪府宅建指導課の回答:
- 架空の物件をSNSで紹介していた場合は、宅建業法違反(おとり広告)に該当し、指導対象になる可能性がある
- ただし、実際に売却活動が行われている実在の物件であれば、現状の宅建業法ではグレーゾーンであり、明確な指導対象とはなりにくい
- 今後、こうした相談が増えているため、ルール整備の議論は加速する可能性がある
今回の確認はあくまで「入口段階」のものであり、法的な確定的見解ではありません。
消費者庁や公正取引委員会など、さらに上位の行政機関や専門家への相談が必要なケースもあると思います。
SNS上にあふれる“誰か分からない人”による発信
私がSNSを見ていて強く感じるのは、「誰か分からない人」が不動産情報を日々発信しているという事実です。
そうした方々の多くは、物件の詳細な事情や売主の意向、売却背景などに触れず、ただ“情報を回している”ような投稿が目立ちます。
売主と直接やり取りをし、価格や販売戦略を一緒に考え、情報の取扱いについて取り決めている宅建業者からすると、
「これは果たして売主の同意を得て発信されている情報なのか?」と、疑問を持つことがあります。
SNSの投稿がきっかけで、売却活動に支障が出たり、取引が中止になるといったケースも想定される中で、発信した“誰か”がその責任を取れるのかどうか。そこに対する不安がつきまといます。
不動産は高額かつ“生き物”のような存在
不動産は、数千円や数万円の商品とは違います。
収益物件や事業用物件となれば、数千万円から数億円、時には数十億円規模にもなります。
しかも、毎日状況が変わり、常に“動いている”のが不動産です。
そうした繊細かつ高額な取引情報を、
誰の責任のもとで、どこまで公開するのかといった視点も必要だと思います。
変化に応じて、お客様にとって何がベストなのかを考える
SNSという新しいツールが登場したことで、情報発信の自由度が増したのは間違いありません。
しかし同時に、「誰が何を、どこまで発信してよいのか」というルールも、追いついていないのが現状です。
時代のスピードは想像以上に速く進んでいます。
これからも、時代の変化を受け入れつつ、お客様にとって何がベストなのか、
という視点で、仕事に取り組んで参ります。
最後までお読みいただきありがとうございました。