【大阪市】“境界明示図”をもらったのに、境界じゃない?道路境界と道路区域の違いについて

木戸翔太のごあいさつ
こんにちは。大阪市中央区・心斎橋の不動産会社「株式会社ビーメイン」代表の木戸翔太です。
今回は、現在ご契約予定となっている阿倍野区の一棟収益マンションの調査を進める中で、あらためて確認する機会があった「道路境界」と「道路区域」の違いについて、実務の中で感じたことを簡単に整理してみました。
大阪市内で不動産の売買や建築に関わる方にとって、判断の際に押さえておきたい基本的なポイントの一つだと感じています。
◆ 市道でも、すべてが市有地とは限りません
今回の物件では、前面道路が幅員6mの市道(建築基準法第42条第1項第1号)となっており、接道に関しては特に問題のないように見えました。
確認のため、大阪市建設局(南港ATC内)を訪ねて「道路境界明示図」と記載された図面を取得したところ、担当職員の方から次のような説明がありました。
「この図面に“境界”と書かれていますが、実際には“道路区域”を示しているものです。」
一見すると同じように見えるこの2つですが、意味はまったく異なります。
◆ 「道路境界」と「道路区域」は何が違うのか?
この2つの用語の違いは、実務上とても大切です。
道路区域:大阪市が「ここまでを道路として管理します」と定めた範囲
道路境界:道路と隣接する民有地との、所有権上の境界線
つまり、「市道」とされている道路であっても、そのすべてが大阪市の所有とは限らず、一部に民有地が含まれている場合があります。
図面に「境界」と記載があっても、それが所有権上の正確な境界線であるとは限らない、という点は注意が必要です。
◆ なぜこうしたズレが起こるのか?
大阪市のような都市部では、長年の土地利用の中で、道路として使われてきた土地の一部が、いまだに民有地のまま登記されているケースがあります。
たとえば、昔から通行に使われていた道が、正式な寄附や払い下げを経ずに「市道」として認定された場合などです。
こうした背景があるため、道路としての利用と、所有権の境界線がずれていることがあります。
このような場合、建築確認や再建築、さらには売買契約時にも注意が必要になります。
◆ 境界を明確にしたい場合の手続き(大阪市)
大阪市では、令和元年(2019年)10月1日より制度が変更され、
境界を明確にしたい場合は、従来の「明示」ではなく、「協議方式」が基本となりました。
現在の手続きの流れ
・道路区域の明示
→ 市への申請により、「道路区域明示図」を取得
・所有権の境界(市と民地の境)を確定したい場合
→ 測量士による「現況実測平面図」を準備
→ 大阪市との協議を行い、「境界確定協議書」を締結
→ 必要に応じて、境界杭の設置も実施
▶ 詳細はこちら(大阪市 建設局 公式サイト)
https://www.city.osaka.lg.jp/kensetsu/page/0000477026.html
◆ 実務で注意しておきたいこと
・「市道」だからといって、道路部分すべてが市有地とは限らない
・図面に“境界”と書かれていても、所有権の線とは異なる場合がある
・売買契約・建築計画の前に、現況と登記の整合性を確認しておくことが大切
・必要に応じて、境界確定の協議や測量を検討する
不動産調査の現場では、一見単純に見えることの中に、思わぬ落とし穴があるものです。
今回のようなケースも、契約前にしっかりと確認しておくことで、後のトラブルを防ぐことができます。
今後もお客様にとって安心できる取引を支えていけるよう努めてまいります。
◆ 不動産に関するご相談もお気軽にどうぞ
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収益物件や事業用不動産の契約・調査・交渉を幅広くサポートしております。
一つひとつの案件を丁寧に、わかりやすく対応することを心がけています。
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