【事業用・収益不動産の売却】現場で実感する「売却戦略」の必要性

皆さま、こんにちは。株式会社ビーメイン代表の木戸翔太です。
大阪・心斎橋を拠点に、収益不動産・事業用不動産の売買仲介を専門としており、日々の実務の中で多様な案件に向き合ってきました。
今回は、収益不動産の売却に関して、日々の実務の中で私自身が感じていることを、いくつかの視点から整理してお伝えできればと思います。
物件によって「売り方」はまったく違うと感じる
現在、販売活動を展開している物件の一例として、以下のようなタイプがあります。
- 土地の広さと立地の良さが特徴の旧耐震・一棟マンション
- 観光需要の高いエリアに立地し、民泊としての活用も可能な戸建て物件
- 某国立大学に近く、築浅RC造の一棟マンション
- 人気エリア主要駅の駅徒歩圏内にある、昭和後期築のS造中規模マンション
- インバウンド需要活発な都市部中心地に立地する、店舗収益物件
一見「収益不動産」という共通点があるようでいて、立地・構造・築年・規模・活用方法がまったく異なります。私自身の実感としては、それぞれに最適な販売手法が異なり、画一的には進められないということを日々感じています。
販売手法は一つではないと考えています
事業用不動産の売却現場では、さまざまな販売手法が選択されています。
たとえば――
- 完全に水面下で動くケース
- レインズには掲載するが、広告不可で取り扱うケース
- レインズに掲載し、広告もすべて可とするケース
- レインズには載せず、ネット広告やSNSを活用するケース
「広告可/不可」の違いだけでも、情報の広がり方や買主の印象に大きな影響が出てくるように思います。
広告を制限することで情報管理を重視するか、認知度を優先するかは、物件の特性や売主様のご意向によって判断されるべきだと感じています。つまり、画一的な方法ではなく、物件ごとの事情に応じて、柔軟な販売ルートを組み立てていくことが重要だと考えています。
弊社では、売主様から売却依頼を受けている物件ごとに、販売方法を個別に考えております。レインズに掲載する物件もあれば、掲載していない物件もありますが、実績で言うと、成約のうち90%以上はレインズ掲載をしていない状況での成約です。(宅建業法に従いながら)。
また、たまに同一物件が複数の仲介業者により一般媒介でレインズに掲載されているケースを見かけます。私個人の意見としては、正直これはあまり意味がないように思います。情報の拡散という観点では広がっているように見えるかもしれませんが、掲載される媒体や閲覧しているユーザー層が同じである以上、情報の到達先もほとんど変わらず、実質的な効果は限定的です。それどころか、同じ物件情報が複数掲載されていることで「売れ残り物件」と見なされたり、売主側の姿勢が不明確だという印象を持たれたりと、むしろマイナスイメージにつながってしまうリスクもあります。
それであれば、信頼できる一社に絞って販売を任せ、適切なタイミングでレインズに掲載した方が、販売活動に一貫性が生まれ、売主様にとってもより良い結果につながるのではないかと考えています。
このような販売戦略を構築するうえで、売主様と仲介業者との間にどれだけの信頼関係が築けているかも、非常に重要なポイントになると感じています。お互いに本音で話ができる関係性があるかどうか、そのうえで戦略を共有し、納得のいくかたちで売却活動を進められるかが、結果に大きく影響することも少なくありません。
事業用・収益不動産の大半はレインズ掲載されていない物件が多い
効果は「向き不向き」がある印象です
ある物件ではレインズに掲載した結果、比較的早い段階で複数の強い引き合いが入り、スムーズに契約に至ったことがありました。
一方で、価格帯が高めの物件や建替えなどの再開発の視点を持つようなものは、レインズ経由の反響が限定的となることもあります。そうした場合には、既存の信頼関係を基にした情報提供の方が、結果的に話が進みやすい印象を持っています。
さらに、店舗収益など特定用途の物件では、反響数が限られた中でも、内容に合致した層へのアプローチが鍵になると感じています。
このように、レインズが効果的な物件もあれば、そうでないケースもあるというのが、私なりの実感です。
また、実需系の不動産とは異なり、事業用・収益不動産を専門に取り扱う業者の多くは、そもそもレインズをあまり見ないという現実もあるように思います。私の感覚では、レインズに掲載されていると聞いただけで、その時点で「情報が広まりすぎている」と判断され、営業対象から外してしまう業者も少なくありません。
レインズに掲載した直後にご成約いただければベストなのですが、販売期間が長引くとどうしても「売れ残り」と見なされがちになり、買主の目も厳しくなってきます。そうなると価格交渉を受けやすくなり、結果として売却活動が難航するケースも少なくありません。
このため、販売開始からの数週間がとても重要で、ここでどれだけ良いスタートを切れるかが売却成功のカギになります。
背景には、物件ごとの個別性の高さがあります。売主様との信頼関係や、独自ルートでのやり取りを重視する業者が多く、自分たちが扱う物件をある程度限定している傾向があるのも現場で感じる特徴のひとつです。
レインズという仕組みそのものに対して「情報開示が不十分だ」「業界の透明性を欠いている」といった考えもある一方で、そうした制度的な議論はさておき、私は常に「クライアントにとってどの選択がもっとも利益につながるのか」という視点を大切にしています。
お客様から大切な資産の売却をお任せいただく以上、その信頼に応えるためにも、今ある手段の中で最善の方法を選び、戦略的に取り組むことが売却を受託した側の責務だと感じています。
売却戦略を左右するのは「誰に売るか」だと思います
物件の特性に加えて、「誰に売るか」という視点が販売戦略に大きな影響を与えているように思います。
たとえば
- 一般投資家がキャッシュフロー、利回りを重視する物件
- 資産家が相続対策などで検討する物件
- 稼働率が低く、取得後にリノベーションやリーシングを施すことで価値を高めようとするプロ投資家層向けの物件
- 建て替えや再開発を視野に入れた、土地の価値が主軸となるようなデベロッパーや事業法人向けの物件
- 利回りは低くても、希少性や立地価値によって「出れば買いたい」と言われるような、富裕層を中心とした資産性重視の層に向けた物件
さらに、価格帯も大きな判断軸になると感じています。
だからこそ、「誰に届けるか」を想定した販売戦略が求められていると感じています。
お問い合わせについて
事業用・収益不動産の売却など、ご相談などございましたら、お気軽にご連絡ください。お客様のご事情に合わせて、最適なご提案をさせていただきます。
株式会社ビーメインでは、一つひとつのご依頼に丁寧に向き合い、信頼を大切にした取引を心がけております。