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2025.5.26
コラム

不動産投資の買い時をどう考えるか|相場感覚とキャッシュフローの視点

こんにちは。株式会社ビーメインの木戸翔太です。
不動産業界に入って約20年。収益物件を中心にさまざまな取引に携わってきました。

その中で最近とくに強く感じているのは、
「今の相場は高いか安いか」という感覚だけで投資判断をすることの危うさです。

一見、判断材料としては分かりやすいのですが、そこに頼りすぎると、見えるものも見えなくなる。
今日はそんな話をお伝えしたいと思います。


「今の相場は高いから買わない」という判断は、一理ある。ただし…

相談を受けていると、よくこんな言葉を耳にします。
「今は物件価格が高すぎるから、今は買わない方がいいと思っています」

たしかにその考え方、慎重な姿勢としては間違っていません。
ただし、この言葉の裏側には、こういう前提があります。

「今の相場の中で安く感じるものがあれば、買う」

つまり、投資判断の基準が相場そのものに置かれているわけです。


相場感覚だけで判断してしまうことのズレ

このような判断スタイルは、いわば「仕入れ」としての目線に近い感覚です。
実際、宅建業者として短期転売をビジネスにしている方々にとっては、
相場より安く仕入れて、高く売るという発想はとても合理的です。

また、宅建免許を持つ不動産業者の中には、
転売益を得ながら資産として保有物件を育てていくというバランスの取れた戦略を実行している方もたくさんいらっしゃいます。

一方で、一般の投資家は、基本的に「資産として保有する」ことが前提になります。
宅建業法では、反復継続的に不動産を売買するには免許が必要とされているからです。

もちろん、今の相場の中で「少しでも条件の良い価格で買いたい」と考えるのは、ごく自然なこと。
ただ、その“今の相場”という土台自体が、常に変動するものだということも同時に理解しておく必要があります。


今の相場の中での判断は、戦略があるならOK

「今の相場では一切新規投資はしない」と考えて行動している投資家もいれば、
「今の金融条件だからこそ積極的に買っていく」と動いている投資家もいます。

どちらも、それぞれの戦略と目線に沿って行動しているなら、どちらも正解です。

問題は、「今の相場の中で高い」「相対的に安い」
という判断だけで物件を評価しようとしてしまうこと。

これは、空気のような不安定な基準でしかなく、数字としての根拠が薄い。
それが、投資判断としてブレやすくなる一番の原因です。


価格だけでなく、「今の条件でちゃんと回るか」が本質


この物件が、今のこの条件で、ちゃんとキャッシュフローを生み出すかどうか。

見た目の価格が多少高くても、賃料が安定していて、借入条件が良く、
運営費も適正であれば、収支はしっかりと回ります。

逆に、価格が安くても金利が高かったり、空室が多くて修繕リスクが大きければ、回りません。
だから価格そのものより、「中身」の判断が大切です。


キャッシュフローツリーで“構造”を見る力を

そこで重要になるのが「キャッシュフローツリー」という考え方です。

これは、家賃収入から運営費、返済、税金までの流れを順番に見て、
本当にその物件が回っているかどうかを視覚化するフレームです。

項目説明
総潜在収入(GPI)満室時に想定される家賃収入
▲ 空室損・滞納損実際のマイナス要因
= 実効総収入(EGI)実際に得られる収入
▲ 運営費(OPEX)管理費、修繕費、税金、保険など
= 営業純利益(NOI)EGI − OPEX(=物件の実力)
▲ 年間返済額(ADS)借入返済(投資家によって変動)
= 税引前CF(BTCF)税引前のキャッシュフロー(NOI − ADS)
▲ 税金所得税・法人税など
= 税引後CF(ATCF)最終的に残る手元キャッシュ

NOIまでは物件の力、ADS以下は投資家の条件で変わる領域です。


キャッシュフローの実績の積み上げがモノを言う

ここで少し切り口を変えて話すと、
投資判断において、バランスシートで「取得価格」と「時価」を比較して評価するという考え方があります。

これは不動産業者のように、物件を商品として仕入れ、加工転売によって利益を出していくスタイルなら、非常に大事な視点です。

しかし、中長期的に資産形成を目指す不動産投資においては、
仕入れてすぐ売らなければ事業が成立しないような状況は、むしろ危険だと思っています。

実際、将来の景気変動や市場環境の変化によって、時価というものは簡単に上下します。
つまり、バランスシート上で時価がプラスになっていたとしても、売却しない限り現金にはならない。
“見た目の評価益”は、あくまで紙の上の話です。

それよりも、毎月しっかり家賃が入り、経費と返済を差し引いて手残りが出ている。
このキャッシュフローの実績の積み上げこそが、次の融資の信頼にもつながっていく。

この文章が、誰かの投資判断の整理や視野を広げるヒントになれば幸いです。

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