【収益不動産投資分析】信用金庫でフルローンを組んで物件を買ったらどうなる?

金利・返済額・手残り・将来の売却まで、解説します
こんにちは。株式会社ビーメインの木戸です。
本日は、不動産投資における「フルローンを組んで物件を購入した場合」について、投資事例をもとに解説いたします。
「自己資金をなるべく使わずに物件を購入したい」とお考えの方にとって、非常に参考になる内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。
某信用金庫の特徴
この信用金庫は、築年数が古い建物にも融資してくれる金融機関です。
主な特徴は以下のとおりです。
- 金利は4%前後とやや高め
- 返済期間は最大35年まで
- 築30〜35年ほど経った古いマンションでも、しっかり調査して問題なければ、長い返済期間で借りられる
- 「毎月ちゃんと返せるかどうか(収支)」を一番重視する
- 売却時に一括返済する場合は、借金残高の約2%が手数料として必要
- 大幅な容積超過などは取り扱い不可
- 収支、評価、属性次第で物件価格の100%まで借りる「フルローン」も場合によっては可能 ※すべての物件に当てはまるわけではありません。
フルローンで購入した場合のシミュレーション
それでは、以下の条件で試算してみましょう。
- 物件価格:1億円
- 表面利回り:9%(=満室想定年収が年間900万円)
- 空室リスク:10%、経費率:15%(管理費など)
- 自己資金:600万円(登記費用や仲介手数料などの諸経費)
- 借入金額:1億円(フルローン)
- 金利:年4%、返済期間:30年(元利均等返済)
※「フルローン」とは、物件価格はすべて借り入れできるが、登記や手数料などの諸経費は現金(自己資金)で用意する必要があります。
試算結果(その①)このまま購入した場合
- 家賃から経費などを引いた年間の利益(NOI):約688万円
- 年間のローン返済額(元本+利息)(ADS):約573万円
- 年間の手残り(利益−返済)(BTCF):約116万円
- 自己資金600万円に対する利回り(CCR):約19%
- 銀行が見る安全ライン(DSCR):1.2(→1.3以上が目安)
手残りは黒字で、自己資金の回収効率も悪くありません。
ただし、銀行の基準となる「毎年余裕をもって返せるか」(DSCR)の指標にはやや届いていません。
試算結果(その②)銀行基準をクリアするためには?
同じ条件でも、銀行の求める「毎年しっかり返せる水準(DSCR1.3)」を満たすためには、
家賃収入がもう少し高くないといけません。
- 必要な利益:約745万円
- 必要な表面利回り:約9.74%(900万円→974万円くらい)
- 手残り:約172万円
- 自己資金に対する利回り(CCR):約29%
つまり、表面利回りが10%以上ある物件でないと、最低限の余裕を持った融資を組めるとは言えないということです。
見えてくるメリットとリスク
今回のように、自己資金は少なくて済む(600万円)ので、資金効率はとても良いです。
一方で、毎月の返済が重く、利益に余裕があるとは言えません。
さらに注意したいのは、ローンの返済は「元利均等返済」なので、最初の数年間はほとんどが「利息」で、元本はなかなか減りません。
以下が、残債と支払利息の目安です。
年数 | 残っている借金 | 累計の利息支払い額 |
---|---|---|
5年後 | 約9,044万円 | 約1,909万円 |
10年後 | 約7,878万円 | 約3,607万円 |
5年で累計約2,860万円返しても、元金・借金は1,000万円弱しか減っていません。
この間に家賃が下がったり、大規模な修繕が必要になれば、借金よりも物件価格が下がる「残債割れ」が起きる可能性もあります。
売却できるかどうかが勝負を決める
不動産投資は、「買ったら終わり」ではありません。
最終的に売って、いくら残るかが一番大事です。
もっと言えば、この融資条件の場合は、いつでも購入金額よりも高く売れる価格で物件を買っておくことが投資の成否を分ける条件になりそうです。
どんなに毎年黒字でも、いざ売るときにローンが残っていたら、よほど潤沢なキャッシュフローを売却までに確保できていない場合においては、厳しい結果となります。
だからこそ、「出口」まで考えて、
この金額で売れる見込みがある物件を、最初に買うことが何より重要です。
まとめ
今回の検証からわかることは、
- 自己資金が少なくて済むのは魅力的
- でも、ローンの返済が重いので、物件の収益性(利回り)が高くないと厳しい
- 表面利回りが最低でも10%以上ないと安心できない
- 元本の減りが遅いので、売却の時期や価格には注意が必要
- “買えるか”ではなく、“売れるか”を意識して判断することが大切
ということです。
なお、ここでご紹介した信用金庫の条件は、あくまで一例です。
金融機関ごとに融資条件・審査スタンス・金利の設定は大きく異なります。
物件の特性やご自身の投資スタンスに応じて、各金融機関のメリット・デメリットをしっかりと比較・分析した上で、計画的に金融機関を選択・活用することが大切です。
それが結果的に、投資家と金融機関の双方にとって健全で持続可能な関係を築くことにつながります。
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