【宅建業で独立開業】ゼロから営業開始までのリアルな道のり

こんにちは。大阪心斎橋を拠点に宅建業を営む「株式会社ビーメイン」代表の木戸翔太です。
近年、未経験から宅建業界に挑戦する方や、フリーランスで働くスタイルを模索する方が増えています。私も長年の業界経験を経て、自らの会社を立ち上げることを決意しました。
この記事では、宅建業免許の取得から営業開始に至るまで、私自身の経験をもとに、その具体的な流れとポイントを整理してお伝えします。
1. 独立を考える前に:宅建業の基本と心得
社員やフリーランスとして他社に所属する形で宅建業に関わる場合は、自身が宅建士でなくても業務に携われるケースもあります。しかし、法人を立ち上げて独立開業する場合、自分自身が宅建士の資格を持っていた方が初期の運営コストやリスクを抑えることができます。
特に一人でスタートする場合、最低限の宅建業の法的知識の基盤としても宅建士資格は非常に役立ちます。
2. 退職から法人設立、免許申請までの準備
私は2024年12月、17年間勤務し、最終的には取締役副社長として会社運営にも携わった宅建業の会社を退職し、かなり急いで同じ月の12月25日に法人設立を行いました。なぜなら、宅建業免許がなければ営業ができず、申請から免許が下りるまでに約5週間を要するためです。
免許申請には、営業可能な状態のオフィスが必要です。私はすぐに賃貸物件を契約し、家具を調達して年末年始の間に体制を整えました。申請時には、事務所の写真や表札、ビルの入口から区画までの経路なども提出が求められます。
実際、事前相談の際に椅子が一脚しか写っていない写真に対して「来客時に一脚でどう対応するのか」と指摘され、急きょその日のうちにもう一脚追加購入し、写真を撮り直して提出したというエピソードもあります。それほど細かい部分まで見られるという意識を持つ必要があります。
申請書類はかなりのページに及びます。私は申請時に受理してもらえない状況を避けるため、大阪府庁へ事前確認に出向き、徹底的に準備を行いました。
宅建業免許が下りるまでは、営業行為を行うことはできません。実際、免許が下りる前にホームページを公開したことで指導を受け、免許交付が遅れた事例もあると聞いています。申請後は、家賃や各種経費などの運営コストが先行しますので、できるだけ早く免許を取得したいという気持ちが強くありました。
3. 電話番号と営業電話対策
宅建業免許の申請は、行政書士に依頼するケースもありますが、聞いたところでは半数程度は自力で行っているようです。しっかりとした重要事項説明書を自ら作成できる力があれば、申請も十分に対応可能です。開業費用を抑えたい方には、手間はかかっても自分での申請をおすすめします。
免許申請書に記載した電話番号は、大阪府のホームページで公開されます。携帯番号を記載した場合、営業電話が大量にかかってくるとの話を事前に聞き、私は固定電話を事前に準備しました。
大阪府のホームページで公開されている新規免許情報を見ると、半数程度は携帯電話を記載して申請しているようでした。
4. 法人口座と資金調達の壁
営業を始めるには資金も不可欠です。私は会社設立の直前から日本政策金融公庫への創業融資の相談を行っていましたが、宅建業免許が下りていなければ融資は実行されません。
融資金の受け取りには法人口座が必要ですが、近年はコンプライアンスの厳格化により、ネット銀行以外の実店舗型金融機関の法人口座開設が難しくなっています。私は前職時代に関わりのあった信用組合の担当者に相談し、スムーズに開設できました。
都市銀行では、複数回の面談のうえで、海外送金の有無や想定顧客像まで詳細に確認されました。また、お付き合いのある取引先の法人名までヒアリングされました。正直、予想以上にハードルが高かったですが、無事に審査を通過し開設することができました。これはおそらく、個人で住宅ローンをこの都市銀行から借りていたことが有利に働いたように感じています。
5. クレジットカードと支払いインフラの整備
近年は起業直後でも申し込める法人クレジットカードが増えてきています。私はアメックスを利用しましたが、カードの審査には日数がかかるため、早期の申請が不可欠です。会社設立直後に申込をしておくことをおすすめします。
クレジットカードがないと契約できないサービスも多く、事業インフラの整備に欠かせない存在だと実感しました。法人口座についても、引き落とし対応を要する契約が多いため、宅建業が下りてすぐに口座開設が出来る準備を進めておく方がよいかと思います。
6. 開業費用と業態による違い
私の場合、予定よりも若干開業費の予算をオーバーしましたが、「最低限一定のクオリティは保つ」ことを重視しました。
事業用・収益不動産の売買仲介が中心のため、路面店や広告宣伝に大きな投資は不要でした。一方で、賃貸仲介や実需不動産を主軸にする場合は立地や集客施策に費用がかかるため、開業前の事業設計は慎重に練る必要があるかと思います。
7. 計画通りにいかないからこその柔軟さ
すべてが計画通りに進むことはほぼありません。実際、期待していた案件が進まないこともありましたが、まったく想定していなかったルートから別の成果が生まれたケースもあります。
情報の入り口は意外なところにある——そう実感させられる日々です。
8. 最後に:独立の現実と醍醐味
仲介業は決して片手間でこなせるような簡単な仕事ではありません。特に事業用不動産の売買となると、数千万円から数億円規模の案件も多く、未経験のまま飛び込んで数か月間成果が一切出ずに離脱する人も少なくありません。それだけ、気力と覚悟と継続力が問われる世界です。
独立のタイミングについて、条件が整ってから動こうと考える方も多いかもしれません。しかし、実際には「整ったから始める」のではなく、「走りながら整える」という姿勢の方が、時間を味方につけながら前進できます。私自身、開業後にたくさんの新しい出会いやチャンスを得ました。
独立してからの道のりは、思ってもいなかった出来事の連続です。それは避けられないことですし、むしろ起こるべくして起こるものだと思っています。だからこそ、いつ始めるかよりも、始めてからどう動くかが重要です。
私もまだ開業して日が浅く、結果が出たわけではありません。しかし、一人で仕事をするということは、誰かに指示されることもなければ、逆に誰も何も言ってくれません。就業規則もなければ、ルールもありません。
すべて自分次第です。
思いついたらすぐ行動できる。方針も判断も自分の責任で決められる。それが今、とても面白いと感じています。
日々の出来事に学び、試行錯誤を重ねながら、これからも歩んでいこうと思います。
なお、世の中には「独立はそんなに甘くない」という声が多くありますが、私はそうは感じていません。結局は、やる人次第です。
私も開業前に、一足早く独立した先輩にリアルな声を聞き、判断の参考にしました。周囲の雑音に左右されるよりも、自分が信頼できる人の話を聞く方が、何倍も有益ですし、経営者として生きていくのであれば、雑音に左右されずに自分を信じて突き進む力も必要かと思います。
少しでも、これから開業を目指す方にとって有益な情報になっていれば幸いです。
ご覧いただき、ありがとうございました。