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2025.5.16
コラム

不動産投資で知っておきたい、もう一つの利回り「IRR(内部収益率)」

こんにちは。株式会社ビーメイン代表の木戸翔太です。

不動産投資の判断において、「利回り」という言葉はよく耳にするものの、その中身にはいくつかの種類があります。
本記事では、投資効率を“時間軸”で評価できるIRR(内部収益率)について、具体例とともに解説していきます。
「この投資、本当に良かったのか?」を数字で語るためのひとつの指標として、参考にしていただければ幸いです。

― 時間軸でとらえる「IRR(内部収益率)」という考え方 ―

「この物件、利回りはどれくらいですか?」

不動産投資の現場でよく出てくる質問です。
ただ、その「利回り」が意味しているのは、たいてい表面利回り想定利回りのこと。
つまり「いま現在の家賃収入」に対してどれだけの利回りがあるか、という目安です。

もちろん、それも大切な指標のひとつです。
でも投資は、物件を購入したあと数年かけて運用し、最終的には売却して資金を回収するという流れがあります。

そう考えたとき、もう一つの見方が必要になります。
それが、IRR(内部収益率)という考え方です。


IRRとは?

回収までの時間と金額をひとつの利回りにまとめる指標

IRR(Internal Rate of Return)は、
「この投資が、年◯%の複利で運用されていたのと同じ効果がある」という考え方で、投資の効率を判断する指標です。

たとえばIRRが15%という結果であれば、
「自己資金を5年間、年15%の複利で運用していたのと同等の回収効率だった」と解釈できます。

言い換えると、購入から売却までのお金の流れを、ひとつの年率(利回り)に置き換えたものです。


IRRの強みは、「時間軸の変化」にも対応できること

IRRのもうひとつの強みは、毎年のキャッシュフローが変動するような投資にも使えるという点です。

たとえば、以下のようなパターン:

  • 全空室で購入 → 時間をかけて満室にしてから売却
  • 築古で修繕が必要 → 初期は赤字、その後黒字化して出口
  • 土地を購入 → 建築 → 賃貸付け → 売却(開発型の投資)

こういった「時間をかけて価値をつくる投資」では、表面利回りだけでは何も判断できません。
IRRなら、お金の出入りがバラバラでも、その全体を“ひとつの回収効率”としてまとめられるため、再生案件や開発案件にも応用が可能です。


ケース比較|売却価格によってIRRはどう変わる?

共通の前提条件(シンプルなモデル)

  • 物件価格:2,000万円(全額自己資金)
  • 保有期間:5年間
  • 毎年のNOI(営業純利益):150万円
  • 借入:なし
  • ※税金・修繕・手数料などのコストは省略。実務では融資や諸経費を考慮します。

ケース①:5年後に1,500万円で売却した場合

内容キャッシュフロー
0年目自己資金投入−20,000,000円
1〜4年目NOI+1,500,000円 ×4年
5年目NOI+売却+16,500,000円

IRR:約2.77%

実務では、購入価格(2,000万円)よりも売却価格(1,500万円)が低い場合、
一見すると「損をしている」と判断されがちです。
しかし、5年間にわたって毎年150万円のキャッシュフローを得ていたことを加味すると、
年利2.77%の複利運用と同等の回収ができていたという結果になります。

つまり、IRRは低水準ですが、「売却益が出ていない=赤字」とは限らないということ。
IRRは、“時間とキャッシュフローを通じた回収効率”を見せてくれる指標です。


ケース②:5年後に2,500万円で売却した場合

内容キャッシュフロー
0年目自己資金投入−20,000,000円
1〜4年目NOI+1,500,000円 ×4年
5年目NOI+売却+26,500,000円

IRR:約11.48%


売却価格が違えば、IRRも大きく変わる

どちらのケースも、保有中の収益は同じです。
でも、出口価格が違えば、投資としての「回収効率」は大きく変わるということが、IRRからは見えてきます。

IRRは「どのタイミングで、どれだけのお金が入ってきたか」に敏感なので、
再生案件のように初期が赤字・後半で回収というパターンでも、ちゃんと評価できる指標です。


実務では、5年スパンでIRRを見ることが多い理由

CPMやCCIMなどの実務系資格でも、IRRはよく使われる指標です。
その中でも「5年スパン」でIRRを見積もるケースが多いです。

その理由は以下のとおりです:

  • 賃料や相場の見通しがある程度立てやすい
  • 金利や市況変動の予測レンジとして現実的
  • 投資回収と出口戦略を組み合わせやすい

取得前には「5年間でどれだけのCFと売却益が見込めるか」を仮定し、
売却前には「今までのCF+想定売却価格」からIRRを逆算することで、
この価格で売れば、年◯%で回収できた投資だったかが数字で見えるようになります。


IRRを活かすには、「数字の履歴」が必要

IRRは便利な指標ですが、元になるデータがなければ使えません。

特にすでに収益不動産を持っている人は、
毎月のキャッシュフロー(収入・支出)をしっかり記録しておくことが重要です。

  • 家賃収入はいくらだったか
  • 空室率や管理費などの実績はどうだったか
  • 最終的にいくらで売却する予定なのか

これらの履歴を残しておけば、IRRを通じて「投資の回収効率」を明確に説明できるようになります。


まとめ|IRRは、時間で見る利回り

  • 表面利回りは「いま現在」のスナップショット
  • IRRは「時間を含んだ資金の動き」で投資を評価する指標
  • 初期に赤字でも、全体で見れば成立する投資もある
  • キャッシュフローの記録があれば、IRRは出口判断に強い武器になる

回収効率を、時間とともに見る。
IRRはそんな視点を与えてくれる、実務的な「もうひとつの利回り」です。

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